全ネジカッター(全ねじカッタ)は、寸切りボルト(全ネジ)を刃で挟んで切る電動工具です。マキタ・HiKOKI・パナソニックから充電式の機種が出ていて、切れる太さ・使う電池・重さ・付属品が機種ごとに違います。
筆者はマキタのSC103D・SC102D、HiKOKIのCL18DA・CL12DAの4機種を実際に買い、全ネジを切ったり、重さや付属品を比べたりしてきました。この記事では、2026年10月時点でメーカーの公式サイトに載っている充電式の機種を、公式の値で比べます。
この記事を読むと、切る太さ・持っている電池・作業の姿勢から、どの全ネジカッターを選ぶかが決められます。先に比較表と選び方の3つのポイント、そのあとに機種ごとの特徴の順です。

全ネジカッターとは

全ネジカッターは、ハサミと同じように上下の刃で全ネジを挟んで切ります。ディスクグラインダーや高速切断機と違って火花が飛ばず、切り粉も出ません。切った面のねじ山がつぶれにくく、切ったあとにそのままナットを通せることが多いのも特徴です。
電気工事や空調設備の現場では、ケーブルラックや配管を吊るボルトを1日に何十本も切るので、全ネジカッターがよく使われます。全ネジの太さや材質、ほかの切り方は寸切りボルトとは?でまとめています。
充電式全ネジカッターの比較表
| 項目 | マキタ SC103D ![]() |
HiKOKI CL12DA ![]() |
マキタ SC102D ![]() |
HiKOKI CL18DA ![]() |
パナソニック EZ45A9 ![]() |
マキタ SC121D ![]() |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 電圧 | 10.8V (スライド式) | 10.8V | 18V (14.4Vも可) | 18V (マルチボルト) | 18V・14.4V | 18V |
| 切れる太さ (軟鋼) | W3/8・M10 | W5/16・W3/8 M6〜M10 | W3/8・M10 | W5/16・W3/8・W1/2 M6〜M12 | W3/8・W1/2 M10・M12 | W5/16・W3/8・W1/2 M8〜M12 |
| ステンレス | W3/8 | W3/8 | W3/8 | W3/8 | W3/8 | W5/16・W3/8・W1/2 M8〜M12 |
| 質量 (電池込み) | 2.8kg | 2.7kg | 3.2kg | 3.2kg | 3.5〜3.75kg | 6.0kg |
| 1充電の作業量 (W3/8軟鋼) | 約700本 | 約800本 (5.0Ah) | 約1,600本 | 約1,400本 (5.0Ah) | 約620本 (18V 5.0Ah) | 約560本 |
| 最小切断長さ | 20mm | 17mm | 20mm | 記載なし | 約25mm | 記載なし |
| コレクトボックス | なし | 付属 | なし | 付属 | 記載なし | なし |
| W3/8トリマ | 別売 | 付属 | 別売 | 付属 | 記載なし | 不要 (バリが出ない) |
| 本体のみの価格 | 63,000円 (ケース付き) | 60,000円 | 65,500円 (ケース付き) | 63,000円 | 166,500円 | 224,000円 (ケース付き) |
| 筆者のレビュー | あり | 実機あり | あり | あり | - | - |
価格はメーカーの標準小売価格・希望小売価格(税別・2026年10月時点)で、販売店での実際の価格とは異なります。質量・作業量はメーカーの公表値で、HiKOKI・パナソニックは表に書いた電池を付けたときの値、マキタは電池の型番の記載がありません。作業量はメーカーごとに条件が違うので、目安として見てください。
このほかHiKOKIには、W3/8までのCL18DSL(3.1kg・本体のみ72,700円)と、W1/2まで切れるCL18DSAL(4.2kg・本体のみ147,000円)も公式サイトに載っています。
全ネジカッターの選び方|3つのポイント
切る全ネジの太さと材質

最初に確かめたいのは、切る全ネジの太さです。よく使われるのは3分(W3/8・約9.5mm)と4分(W1/2・約12.7mm)で、比較表の中でW1/2を切れるのはCL18DA・EZ45A9・SC121Dの3機種で、このほかHiKOKIのCL18DSALも切れます。W3/8とM10までなら、どの機種でも切れます。
ステンレスの全ネジは、どの機種もW3/8まで切れます。ステンレスのW1/2まで切れるのは、比較表の中では油圧式のSC121Dだけです。切断能力に無い太さは切れないので、W3/8までの機種でW1/2を切ることはできません。
持っている電池が使えるか
全ネジカッターは本体のみでも6万円を超え、電池・充電器付きのセットはSC103DSMX(BL1040B×2・充電器付き)で84,400円、CL18DA(XPZ)(BSL36A18X×1・充電器付き)で100,000円。すでに同じメーカー・同じ電圧の電池を持っていれば、本体のみを選んで電池と充電器のぶんを買わずに済みます。
- マキタ10.8V(スライド式):SC103D
- マキタ18V・14.4V:SC102D(18Vなら油圧式のSC121Dも)
- HiKOKI 10.8V:CL12DA
- HiKOKI 18V・マルチボルト:CL18DA
- パナソニック14.4V・18V:EZ45A9
重さと、上向きで切るときの付属品

天井から下がった吊りボルトを切るときは、本体を持ち上げたまま作業します。10.8VのCL12DA(2.7kg)・SC103D(2.8kg)は、18VのSC102D・CL18DA(3.2kg)より軽く、油圧式のSC121Dは6.0kgあります。

上向きで切ると、切り落とした短い全ネジが下に落ちます。HiKOKIのCL18DA・CL12DAには、切った全ネジを受け止めるコレクトボックスが付いていて、切断後のバリを取るW3/8トリマも付属します。マキタのSC102D・SC103Dにはコレクトボックスが無く、トリマは別売です。下に人がいる場所や、床を汚したくない場所で上向きに切る場合は、この付属品の違いを比べておきたいところです。
全ネジカッターの機種ごとの特徴
マキタ SC103D:マキタ10.8Vで軽く使いたい場合

マキタの10.8V(スライド式)の電池を使う全ネジカッターで、質量は電池込みで2.8kg。最小切断長さは20mmで、薄型のLED照明に替えるときのように、天井ぎりぎりで切る作業にも使えます。1充電の作業量はW3/8軟鋼で約700本と、18VのSC102D(約1,600本)の半分以下です。
重心の関係で、電池を下にして立てて置くことはできませんでした(SC102Dは立てられます)。本体のみのSC103DZKは63,000円で、ケース(マックパック)が付きます。
HiKOKI CL12DA:HiKOKIの10.8Vで、コレクトボックスも欲しい場合
HiKOKIの10.8Vの電池を使う全ネジカッターで、質量はBSL1250MT(5.0Ah)を付けて2.7kg。最小切断長さは17mmと、比較表の中で一番短い値です。コレクトボックスとW3/8トリマが付き、W3/8のほかにW5/16やM6〜M10の軟鋼も切れます。
本体のみのCL12DA(NN)は60,000円、BSL1250MT・充電器・ケース付きのCL12DA(JS)は80,000円です。
マキタ SC102D:マキタ18Vで1充電に多く切りたい場合

マキタの18Vと14.4Vの電池が使える全ネジカッターです。1充電の作業量はW3/8軟鋼で約1,600本と、比較表の中で一番多い値で、1日に何百本も切る現場で電池を替える回数を減らせます。質量は3.2kg、最小切断長さはSC103Dと同じ20mmです。
実際に切ってみると、切断面はきれいで、バリを取らなくてもナットは入りましたが、たまに引っかかることもありました。トリマは別売です。本体のみのSC102DZKは65,500円(ケース付き)、BL1860B×2・充電器付きのSC102DRGXは121,400円です。
HiKOKI CL18DA:W1/2の軟鋼も切りたい場合

2025年12月に発売された、HiKOKIの18V(マルチボルト)の全ネジカッターです。質量3.2kgのまま、W1/2・M12の軟鋼まで切れます。W1/2用とW3/8用のカッタ、W3/8トリマ、コレクトボックスが付属し、トリマは本体に収納できます。
同じHiKOKIでW1/2まで切れるCL18DSALは4.2kg・本体のみ147,000円で、CL18DA(NN)は63,000円です。BSL36A18X・充電器・ケース付きのCL18DA(XPZ)は100,000円で、ステンレスはW3/8まで切れます。
パナソニック EZ45A9:パナソニックの電池でW1/2も切りたい場合

2019年12月に発売された、パナソニックの14.4V・18V両用の全ネジカッターです。W1/2・M12の軟鋼、W3/8の軟鋼・ステンレス、M10の軟鋼が切れ、質量は18V 5.0Ahの電池を付けて3.75kg、最小切断長さは約25mmです。
本体のみのEZ45A9X-Bは166,500円で、W1/2まで切れるCL18DA(NN)の63,000円より高い設定です。パナソニックの14.4V・18Vの電池をすでに持っている場合に候補になります。
マキタ SC121D:ステンレスのW1/2を切る場合

マキタ18Vの油圧式の全ネジカッターです。ステンレスのW1/2まで切れ、ステンレスW1/2の切断時間は約3秒。ねじ溝に合わせて切るのでバリが出ず、トリマは要りません。付属のバランススタンドで本体を水平に保ち、全ネジを置いて切ることもできます。
そのかわり質量は6.0kgあり、本体のみのSC121DZKは224,000円(ケース付き)、BL1860B・充電器付きのSC121DRGは259,100円です。ステンレスのW1/2を切る作業が無い場合は、W1/2の軟鋼まで切れるCL18DAやEZ45A9と比べて、重さと価格の違いで選んでください。
DIYで数本だけ切る場合

ボルトラックを1台作るくらいで、全ネジを数本切るだけなら、電動の全ネジカッターを買わなくても切れます。ホームセンターによっては寸切りボルトの切断サービスがあるほか、電源の要らない手動式の全ネジカッター(MCCのAB-3WなどW3/8用)もあります。手動式は両手でハンドルを握り込んで切るので、本数が多いと握力を使います。
迷ったときの決め手
| 条件 | 候補 | その機種にある点 |
|---|---|---|
| ステンレスのW1/2を切る | SC121D | 比較表で唯一ステンレスW1/2に対応 |
| 軟鋼のW1/2を切る | CL18DA EZ45A9 | CL18DAは3.2kg・コレクトボックス付き EZ45A9はパナソニックの電池 |
| W3/8まで・上向きで軽く使う | CL12DA SC103D | 2.7〜2.8kg。CL12DAは最小切断長さ17mm |
| W3/8まで・1充電で多く切る | SC102D | W3/8軟鋼で約1,600本 |
どの条件でも、すでに持っている電池のメーカーと電圧がそろう機種を選ぶと、電池と充電器のぶんを買わずに済みます。
電動工具なびの見解
全ネジカッターは、W3/8までしか切らないなら、どの機種でも切ること自体はできます。そのうえで、切る太さ・持っている電池・上向きで使うかどうかの3つで候補を絞ると選びやすくなります。
W1/2の軟鋼を切る場合は、CL18DAがW1/2対応の機種の中で一番軽い3.2kgで、本体のみなら63,000円です。ステンレスのW1/2を切る場合はSC121Dしか選べませんが、6.0kgの重さと価格を受け入れられるかを確かめておきたいところです。W3/8までで上向きの作業が多い場合は、10.8VのCL12DA・SC103Dと18VのSC102D・CL18DAを比べて、重さと1充電の作業量の違いで選んでください。









