マキタの18V充電式マルチツール「TM53D」。従来機TM51Dの後継で、握り部を細くし、負荷がかかっても回転数が下がりにくくなった、マキタ18Vのマルチツールの標準機です。
本体のみのTM53DZを購入し、騒音と電池込みの重さを測ったり、DIYでよく使う木材のSPF材(1×4材・2×4材)やコンパネ(型枠用の合板)に差し切りしたり、付属のペーパーで研磨したりしてみました。同じマキタ18VのTM52Dと、従来機のTM51D(こちらは公表値)とも比べながら紹介します。

TM53Dのスペック

| 項目 | マキタ TM53D ![]() |
|---|---|
| 電源 | 18V (マキタ18V バッテリ) |
| 振動数 | 6,000〜 20,000min⁻¹ (ダイヤルで 無段階) |
| 振動角度 | 左右1.6° (計3.2°) |
| 質量 (公表値) |
1.9kg (BL1860B装着・ 先端工具なし) |
| 質量 (実測) |
1,998g (BL1860B付き) |
| 握り部周長 | 139mm |
| 本機寸法 (長さ×幅×高さ) |
329×80×120mm |
| ブレード交換 | 工具レス (ホルダボルト+ レバー) |
| 対応ブレード | STARLOCK・OIS |
| 付属ブレード | カットソー TMA047 |
| LEDライト | なし |
| 防滴・防じん | APT |
| 騒音(実測) (ダイヤル最大/最小) |
96dB/72dB |
| 標準小売価格 (本体のみ・税別) |
31,700円 (TM53DZ) |
※価格はメーカーの標準小売価格(税別・2026年10月時点)です。販売店での実際の価格とは異なります。
メリット
- 握り部周長139mmの細いグリップ(従来機TM51Dより56mm細い。実際に握った評価も「細い」)
- STARLOCKとOISの両方の規格のブレードが使える
- ダイヤル最小の実測値は72dB(これまで測ったマキタのマルチツールで一番小さい)
- 本体のみ31,700円に、カットソー・サンディングパッド・ペーパー6枚・ツールボックスが付く
- TM53D専用のデプスゲージと集じんアタッチメントが別売で用意されている
デメリット
- ダイヤル最大の実測値は96dB(これまで同じ条件で測った充電式マルチツールで一番大きい)
- LEDライトは付いていない
- 本体のみの設定で、バッテリと充電器は別売
- 低振動機構(AVT)は付いていない
TM53Dの5つの特徴
- 握り部周長139mmの細いグリップ
- 負荷がかかっても回転数が下がりにくい
- 工具を使わずにブレードを交換できる
- STARLOCKとOISの2つの規格のブレードが使える
- カットソーとサンディングパッドが付いていて、切断と研磨をすぐ始められる
握り部周長139mmの細いグリップ

握り部(手で持つ胴の部分)の周りの長さは139mm。従来機TM51Dより56mm細くなり、化粧箱にも「握りやすい細径グリップ」と大きく印刷されています。
実際に握ってみると、手持ちのマルチツールを細い・中くらい・太いの3段階で比べた中では「細い」側でした。全長も329mmで、TM51D(340mm)より11mm短くなっています。
本体を握ったまま先端を狭い開口や入り隅(壁と壁が内側に折れ合う角)へ差し込む作業では、この細さと短さが取り回しの差になります。
負荷がかかっても回転数が下がりにくい

TM53Dは、ブラシレスモータに「定回転制御」を組み合わせ、ブレードに負荷がかかってもモータの回転数が下がりにくくなりました。
作業能率は、メーカーの比較では従来機TM51Dの約20%アップ。振動数(ブレードが1分間に振れる回数。単位はmin⁻¹)の範囲は6,000〜20,000min⁻¹、振動角度は計3.2°で、どちらもTM51Dと同じ値です。
数値の上限はそのままで、ブレードを材料に押し当てたときの回転の落ち込みを抑えたのが、従来機からの主な変化。切っている途中で回転が落ちにくいぶん、同じ切断を短い時間で終えやすくなります。ただし、切断の速さは今回測っていません。
工具を使わずにブレードを交換できる

ブレードの交換は、本体上面のレバーを起こしてホルダボルトを抜き、ブレードを付け替えたら、ホルダボルトを差し込んでレバーを閉じるだけ。六角レンチなどの工具は使いません。
交換の方式は、従来機TM51Dと同じホルダボルトとレバーの組み合わせです。
切断から研磨へ、研磨からはがし作業へと先端工具を付け替える回数が多い作業でも、そのたびに工具を取りに行かずに済みます。
STARLOCKとOISの2つの規格のブレードが使える

マルチツールのブレードには、本体への取り付け部の形にいくつかの規格があります。TM53Dが対応するのは、ボッシュ発の旧来の共通規格「OIS」(ピン穴で固定するタイプ)と、ボッシュ/フェイン発の現行の立体的な規格「STARLOCK」の2つ。ツールホルダの横にも、OISのマークが入っています。
STARLOCKの上位にあたるSTARLOCK PLUS・STARLOCK MAXへの対応は、仕様に記載がありません。
2つの規格から選べるぶん、ブレードの選択肢は広くなります。ただし、他社製や市販のブレードが付くかどうかは、メーカー公式の適合表で確かめてから選んでください。
カットソーとサンディングパッドが付いていて、切断と研磨をすぐ始められる

本体のみのTM53DZを開けると、入っていたのは本体・取扱説明書・カットソーTMA047・サンディングパッド・木工用のサンディングペーパー6枚(#60/#120/#240が2枚ずつ)・ツールボックスでした。付属のカットソーTMA047には、「32mm」「Wood & Metal」の刻印があります。

付属のカットソーTMA047を付けて、SPF材とコンパネに差し切り(材料の面にブレードを直接押し当てて切り込む切り方)をしてみました。写真は、立てた板のすぐ際で、寝かせた板に切り込んでいるところです。丸のこやジグソーの刃が届きにくい際でも、ブレードの先を当てて切り込めるのがマルチツールの持ち味です。

サンディングパッドにペーパーを付ければ、研磨にも使えます。写真は、付属のペーパーでSPF材の面を研磨しているところです。
騒音と重さを実測:ダイヤル最大96dB、最小72dB
騒音は、騒音計を本体のすぐそばに置き、ブレードを付けずに動かした状態で、振動数調整ダイヤルを最大と最小にして測定。どの機種も同じやり方なので、機種どうしの比較に使えます。

ダイヤル最大の96dBは、これまで同じ条件で測った充電式マルチツールの中で一番大きい値でした。同じマキタ18VのTM52Dは86dBで、TM53Dのほうが10dB大きい値です。どちらもブレードを付けない空回しの音で、切断中の音は測っていません。
一方、ダイヤル最小の72dBは、これまで測ったマキタのマルチツールの中で一番小さい値。TM52D(78dB)と比べても、6dB低い値でした。

重さは、6.0AhのバッテリBL1860Bを付けた状態で1,998g。公表値の1.9kgも、同じBL1860B装着時の値です。同じバッテリを付けたTM52Dは2,054gで、TM53Dのほうが56g軽い結果でした。
片手で持ち上げて構え直す回数が多い作業では、この2kg弱が手にかかる重さの目安になります。
TM53Dを選ぶときに確認したい4つのポイント
バッテリと充電器は別売。セット品の設定はない

2026年10月時点で、TM53Dの品番は本体のみのTM53DZだけです。バッテリと充電器は付かず、化粧箱にも「バッテリ・充電器別販売」と印刷されています。
使えるのはマキタの18Vバッテリで、今回はBL1860B(6.0Ah)を付けて使いました。
マキタの18Vバッテリと充電器をすでに持っている場合は、この条件を気にする必要はありません。持っていない場合は、本体の31,700円に、バッテリと充電器の費用が加わります。
ダイヤル最大の音は96dB
切断はダイヤルを上げて使う場面が多いので、周りへの音は、空回しの実測値でダイヤル最大の96dBを基準に考えておく必要があります。
周りへの音を気にしなくてよい作業場なら、この値は選ぶ条件から外せます。住宅の室内のように周りへの音が気になる場所では、ダイヤルを上げて使う時間に注意が必要です。
LEDライトは付いていない
TM53Dには、手元を照らすLEDライトが付いていません。手元が暗い場所で切る場合は、作業灯を別に用意しておくと、墨線(切る位置に引いた線)が見やすくなります。照明の届く場所での作業が中心なら、ライトの有無は大きな差になりにくい部分です。
デプスゲージと集じんアタッチメントは別売(TM53D専用)
TM53D専用の別売品として、デプスゲージセット(部品番号A-00136)と集じんアタッチメント(部品番号A-00120)が用意されています。
デプスゲージは、本体に取り付けて一定の切込み深さや高さで切るための部品。化粧箱にも「デプスゲージ取付可能(別販売品)」と印刷されています。
集じんアタッチメントは、別売の集じん機につないで、研磨の粉を吸わせながら作業するための部品です。
どちらもTM53D専用で、ほかのマルチツール用の部品とは別物です。床材の開口のように同じ深さで切り込みたい作業や、粉を集じん機で吸いたい研磨が多いなら、本体と一緒に検討しておきたい部品といえます。
他のマルチツールと比較
TM51D(マキタ 18V):従来機と比べる場合
| 項目 | マキタ TM51D ![]() |
マキタ TM53D ![]() |
|---|---|---|
| 振動数 | 6,000〜 20,000min⁻¹ |
6,000〜 20,000min⁻¹ |
| 振動角度 | 3.2° | 3.2° |
| 握り部周長 | TM53Dより 56mm太い |
139mm |
| 本機寸法 (長さ×幅×高さ) |
340×80×122mm | 329×80×120mm |
| 質量 (公表値) |
2.2kg (バッテリ含む) |
1.9kg (BL1860B装着時) |
| 作業能率 | ─ | TM51D比で 約20%アップ |
| 付属ブレード | カットソー TMA047 |
カットソー TMA047 |
| 本体のみの価格 | 30,500円 (TM51DZ) |
31,700円 (TM53DZ) |
TM53Dの従来機で、振動数・振動角度・付属のカットソーは同じです。TM51Dは実機を持っていないので、ここではマキタの公表値だけで比べています。質量はTM51Dが「バッテリ含む」、TM53DがBL1860B装着時の値で、条件がそろっていない点はご注意ください。
TM53Dは握り部が56mm細く全長が11mm短いうえ、負荷がかかっても回転数が下がりにくくなり、作業能率はTM51Dの約20%アップです。本体のみの価格はTM51DZが1,200円安いものの、2026年10月時点のマキタのHPでは在庫僅少品になっています。
TM52D(マキタ 18V):STARLOCK MAXのブレードや低振動機構を使う場合
| 項目 | マキタ TM52D ![]() |
マキタ TM53D ![]() |
|---|---|---|
| 振動数 | 10,000〜 20,000min⁻¹ |
6,000〜 20,000min⁻¹ |
| 振動角度 | 3.6° | 3.2° |
| 対応ブレード | STARLOCK・ STARLOCK PLUS ・STARLOCK MAX (OISは使えない) |
STARLOCK・OIS |
| グリップ (実際に握った評価) |
中くらい (グリップ部周長 169mm) |
細い (握り部周長 139mm) |
| 本体の幅 | 95mm | 80mm |
| 質量 (実測・BL1860B付き) |
2,054g | 1,998g |
| 騒音(実測) (ダイヤル最大) |
86dB | 96dB |
| 騒音(実測) (ダイヤル最小) |
78dB | 72dB |
| 低振動機構 (AVT) |
あり | なし |
| LEDライト | あり (残照機能付) |
なし |
| 付属ブレード | カットソー MAM001 |
カットソー TMA047 |
| 本体のみの価格 | 35,700円 (TM52DZ) |
31,700円 (TM53DZ) |
| セット品 | 73,800円 (TM52DRG) |
設定なし |
※TM52DRGは、BL1860B・充電器・ケース付きのセットです。
TM52Dは、マキタ18Vのマルチツールの中で重い負荷の作業に向けた上位機。振動角度(ブレードが1回に振れる角度の幅。広いほど1回で削る量が増える)が3.6°と広く、重負荷用のSTARLOCK MAXを含む3タイプのSTARLOCKブレードが使えます。振動部と外側のハウジングを分けて振動を伝えにくくする低振動機構「AVT」も付きます。
TM53Dは振動数の下限が6,000min⁻¹で、TM52Dの10,000min⁻¹より低い振動数まで下げられるのが違い。空回しの実測値は、ダイヤル最大ではTM52Dが10dB低く、ダイヤル最小ではTM53Dが6dB低い値でした。
STARLOCK MAXのブレードやAVT・LEDライトが必要ならTM52D。必要なければ、TM53Dはグリップが細くOISのブレードも使えるうえ、本体のみの価格は4,000円安くなります。ダイヤル最大の空回しの音は、TM52Dのほうが10dB低い値でした。
電動工具なびの見解

マキタ18Vのバッテリを持っていて、切る・削る・はがすを細いグリップの1台でこなしたいなら、TM53Dは候補になります。
握り部周長139mmの細いグリップでSTARLOCKとOISのどちらのブレードも使えるうえ、本体のみ31,700円でカットソーとサンディングパッドが付くのも特徴です。
一方、空回しの実測値はダイヤル最大で96dBと、同じ条件で測った充電式マルチツールの中で一番大きい値でした。
重い負荷の作業が多い場合や、音と振動を抑えたい場合は、TM52Dと比べて、STARLOCK MAXへの対応・AVT・騒音の違いで選んでください。


